ラフレシアを見に行く
ラフレシアを見に行く
2003.4.19
今回の旅は、できるだけツアーに参加せず、単独でほっつき歩く方針でした。しかしツアーなら能率よくいろんな観察ができます。クチンに着いて二日目、最低の確保をしておこうと思ってツアーに参加しました。
ツーリスト・インフォメーションで「日帰りでレインフォレストを観たい」と言ったら、筋向かいのBorneo Fairylandという旅行社を紹介されました。そこでまとまったのは、グヌン・ガディン国立公園のラフレシア観察ツアー。ラフレシアは国立公園に行ってもなかなか見られないのですが、この公園では開花状況を把握していて、いま開花中のがあるとのことでした。ラフレシアが見られるなんて期待してなかったので、一も二もなく参加を決めました。
片道一時間のトレイルで花を見て、希望者は滝のそばで泳いでもいい。ランチつき、料金は100リンギット。翌朝9時、ホテルに迎えのバンが来ました。
同行者はブルネイから来てヒルトン・ホテルに泊まっている裕福そうな白人一家三人。SF作家だと自己紹介したら、娘がすかさず「ラフレシアをネタにするの?!」と訊いてきました。「そうするかもしれないが、君が想像しているようなものじゃないよ」と言いたかったのですが、英語不如意につき、「まあねえ」と言っておきました。
グヌンはマレー語で山。ガディン山はクチンの西、80kmくらいのところにあります。
途中の川は橋がなくて、二隻のフェリーボートで渡ります。「ファンタスティック……」とつぶやきながら写真を撮っていたら、「こういうのは日本にはないのかね?」と同行者(亭主)に訊かれました。「ネバー」と答えておきました。
ルンドゥという町で、先に昼食を取ることになりました。食べているのはナシ・ゴレンという典型的なマレーシア料理。チャーハンみたいなものです。
同行者は左から亭主、奥様、娘。名前を聞かなかったので。奥様は上品で気配りのできる人で、ガイドのマレー語をときどき英訳してくれたりします。近くのテーブルを指して「あっちを見て。ムスリムの人が手で食べてるわ」とか言ったり。
グヌン・ガディン国立公園のステーション。公園内の動植物のパネルが展示されていたり、トイレや宿泊施設なども完備している。標高は4〜500mかな。ハンディGPS、etrex summitを持っていたので、ここでセットアップ。しかしジャングルに入った途端、衛星がひとつも受信できなくなりました。さほど急峻な地形ではなかったので、頭上の樹冠部が電波を遮ったのでしょう。
こんな渓流を渡っていきます。靴と靴下を脱いで、ガイドに手を引かれながら。
途中、ラフレシアの芽を見かけました。真っ黒で、ガイドに指摘されないと気がつきません。大きさは小振りのキャベツくらい。
ほんの15分くらい歩いただけで、あっけなく開花中のラフレシアと対面。すごい。
花に顔を近づけてみると、確かに腐肉の臭いがしました。しかしそこらじゅうに漂ってくるほど強くはありません。花弁は1cmくらいの厚みがあって、霜降りステーキ肉のよう。数匹の大きな蠅が止まっていました。
写真を撮っていると、奥様が手を振って蠅を追い払うという一幕が。
「この白人女、梅にウグイス、ラフレシアに蠅、というわび・さびがわからんのかっ!」と思いましたが、苦笑する私を見て相手も気づき、しきりに謝罪されました。
左の写真で倒木に付着している黒いものは、茸の一種です。
謎に満ちたこの花は根も茎も葉も持たない寄生植物で、林床を這う蔓に着生します。開花期間はごく短いのに、狭い範囲に雄花と雌花が同居することがない。種子が着生するには宿主の蔓に傷がないとだめ。いちばんありそうな説明は、イノシシなどの大型哺乳類が蔓を踏んで傷を付けたとき、付着していた種子がそこに食い込むというもの。このときは、大型哺乳類は見かけませんでした。しかし、なぜこんな植物が自然界に許されているのか、私にはわかりません。
大木は必ずといっていいほど、太い蔓植物とセットになっています。蔓は樹冠までまっすぐに連なっています。
ガイドさんの後ろに熱帯雨林のシンボル、板根が。ミサイルのフィンそっくりで、これも見たかったもののひとつでした。
落葉の中を、体長10cmくらいのヤスデが這い回っていました。ガイドさんが「触っても大丈夫だよ」というので「はいはいっ、私やります!」とでしゃばってみましたが、私の手に触れると急にUターンしてしまう。虫除けローションをつけてきたせいでしょうか、失敗でした。
このあとバケツをひっくり返したようなスコールが襲ってきて、白人一家はかなりメゲている様子。私は「熱帯雨霧林に来たらパンツまでぐしょぬれにならなきゃ」と思っていて平気だったので、傘を貸しました。「このあと滝で泳ぐ予定だが、この雨だ、どうする?」という話になって、気乗りしない人といっしょに歩くのも嫌だから「そちらに合わせる」と言ったらステーションに引き返すことに。
公園事務所の前の庭に、ピクルスの実がなった見事な木がありました。
ゲストブックを見ると、日本人もよく訪れていて「花が見られなくて残念。今度こそ!」などと書いてあります。開花状況に関係なく移動するツアーだとそういうこともあるのでしょう。
ガイドさんが来て、「どうだった?」と訊くので「夢がかなった。ありがとう」と答えたら、すごくうれしそうにしていました。
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